班長のてびき

7.班のキャンピング(3)


●キャンポリー

 さて、君のキャンプ訓練はどの<らい効果があるだろうか? それを知るもっともよい方法は、その班を地区または県連盟のキャンポリーに参加させることである。

 毎年春や夏には、国内いたるところでキャンポリーが行なわれており、そこで班は、効果的なキャンピングを経験する。

 キャンポリーとは、2つ以上の隊のキャンピングの技能を実地に発揮してみせることであり、隊は、それぞれのキャンプを1晩以上同じキャンプ地に設けるが、それは楽しみとよい仲間づくりのためであり、そしてお互いにキャンピングについて学び合う機会を得るためである。

 しかし君が県連のキャンポリーに参加できないときでも、隊のキャンプで、ゲーム化して学ぶことができるかもしれない。君はさらに、君自身で自分の仲間だけのものを行なって、別表に示してあるような採点方法を用いて、その能力をテストすることができるかもしれない。

 このような採点方法を考えたのは、隊の全部の班に、隊のキャンピングの水準に到達する機会を与えるためである。この採点の最高得点は500である。400点以上をあげた班はAクラスだ。300点から400点までものはBクラス、参加はしたが300点以下にしかならなかった班はCクラスの格付けを受ける。



(君のキャンポリーの体験)
 それが、どんな様子か見てみよう。その日がくる。用意が整い、全員正装で、装備品、ザック、食糧を持って集まる。そして住むばかりになった君のキャンプ地に到着する。



(皆を点検する)
 設営を開始する前に、皆を点検してみよう。ザックの状態はどうか。パッキングのしかたには間違いはないか。班の装備品は適当に配分されているか。個人装備品は十分か。それから、班員たちの身なりはどうか。

 OK、続けよう。組織はどうか。テント張り、寝床の準備に一所懸命になっているテント係がいるか。かまどを作り、水や薪を持ってきて、炊具を並べ、炊事をするため大活躍している炊事係がいるか。

 これまではまあよかった! 設営をし終わるまで、君は手軽に働くことができる!

 時間はどんどんたつ! テントの位置は適切で、快適なキャンプベッドがあり、毛布や寝袋はきちんと置いてあるか。炊事場に不備はないか。おのやスコップなど工具類の一定の置き場所があり、使用しないときはそこにしまってあるか。コミ処理の設備はあるか。それから、班の便所はどこにあるのか。それはどんな場所に設けられ、どういうふうに建てられているか。



(その意気だ!!)
 以上のチェックを終わったら、次の点について調べる。ひとりひとりが一定の任務を持っているか。皆が自分の責任を果たしているか。スカウトのおきてはほんとうにキャンプのおきてか。すべてが能率的、効果的に行なわれているか。

 今度は班の得点を調べてみよう。こっちもいい。あっちもいい。ここは悪く、あそこはあまりよくない。次回までには、君たちは全体的によくなっていなければならない。

 キャンポリーでは、すばらしい時間を過ごす。しかしそれだけではない。すべての班がキャンポリーで訓練を受けて、君たちの隊の夏季キャンプは、かつてない最大の成功を収めなければならない!どうして? なぜならば、キャンポリーは、隊のキャンピングを、1回は始めから終わりまでそっくり予行演習することになるからだ!


●長期キャンプ

 長期キャンプとは、同じ場所で1週間あるいはそれ以上キャンピングすることである。それは隊全体が夏の間に行なう種類のものであり、君の班が参加できるようになったとき、腕の見せどころになるかもしれないような種類のものである。



(隊の夏季キャンプ)
 その名に恥じない隊ならば、どの隊でも、毎年1週間以上のキャンピングをする。

 隊のキャンピングとは、隊をあげて皆がキャンプすることを意味するが、これには隊長や副長たちも加わり、いっしょに遊び、ハイキングをし、水泳をする----しかし、各班は個々の単位として隊のキャンプサイト内で生活して、それぞれのテント、それぞれの炊事場を持ち、それぞれ自分たちだけで炊事をし、自分たちの班長の活発な指揮の下にある。

 言葉をかえて言うと、「隊とは、その班全部をひとつにしたものである」と同じように、「隊のキャンピングとは、班のキャンピング全部をひとつにしたものである」つまり隊と同じなのだ。

 隊のキャンプ計画が春に発表されたら、ただちに君は、自分の班の計画と仕事を、そっくりこの大きな行事に向けて集中したくなることだろう。その年会体のスカウト活動の総仕上げともいうべきこの計画に、100%の参加を君は期すことになるだろう。



(班の長期キャンプ)
 しかし、多くの班はもっと多くの望みを抱いている。隊のキャンプに参加し、そのうえ、彼らは独り立ちしたいと思うのである。そこで彼らは夏のキャンピングを延ばして、さらに自分の班だけで1週間以上の長期キャンプを試みるわけである。

 この種の班キャンプは、多くの覇気と豪胆さをもたらすことになる。君はその計画を隊長と話し合い‥彼の承認を得る必要がある。君の班の後見役、つまり班員たちの父親のひとりあるいはその他の成人が、班と同行しなければならない。



(長期キャンプの準備)
 隊の夏季キャンプのために準備をするということになると、君と君の仲間は、もちろん、キャンプを成功させるために各班に要求される、あらゆる計画と準備に打ち込む。班長会議が何回も開かれ、その時こそ、君が自分の考えを述べ、責任を引き受けるチャンスだ。

 しかし、班の長期キャンプになると、話は違ってくる。ここでは万事がほとんど、君と君の熱意次第ということになるのだ。もし君が精魂を込めて奔走し、班員を引きずっていけば、君たちは全員すばらしい経験をすることになるだろう。



(君たちの経験)
 君は、班の長期キャンプ計画に着手する前に、君と全班員が果たして計画どおりうまくやれるだけの経験を持っているかどうかを、確かめなければならない。

 君に関する限り、君は何よりもまず班の1泊キャンプのリーダーとしての資格がなければならない。第7章のはじめの「キャンプ訓練」のところであげた条件のほかに、君は次の条件をも満たさなければならないのである。
  1. 君は看の隊長が満足するように、自分の班と少なくとも6回の1泊キャンプをしたことがなければならない。
  2. 君は隊または地区、連盟の夏季キャンプに、少なくとも1週間参加したことがなければならない。
君の班員に対する条件は、
  1. 参加するスカウトたちの少なくとも50%(君白身も含めて)が、君を班長とする班の1泊キャンプに、少なくとも6回参加したことがなければならない。

 君は、少々きつい注文だなぁと思うかもしれない。そう、確かにそうだ!しかし君は、自分の経験からそれらが厳しすぎることではないということを知ることだろう。あらかじめこれくらいの経験をしていないと、長期キャンプを成功させることはとうていできない。



(いつ?)
 長期キャンプは、1週間からそれ以上にわたるものである。だから長い学校休暇を利用しない限り、できないことはいうまでもない。----つまリ7月下旬から8月末までの間でないと、おそらく無理だろう。実際の日取りについては、班集会でどの日がいちばんいいか、十分に話し合った上で決める。

 早めに君の計画作成に着手する。もしキャンプを7月か8月に行なうとすれば、4月中に準備にとりかかっても早すぎるということはない。期日を決めるのが早めにできればできるほど、それだけ早くその他の細かい事項についても、準備ができるのである。



(何を?)
 君の班が自分たちだけの長期キャンプに出発すると、君が考えなくてもそのときすでに、この「何を」ということは決まったも同然だ。つまり、今度のキャンプは、君がこれまで何回も経験した訓練を、そのまま延長したものだからである。

 しかし、その後の年には、君がやりたいと思うほかの形のキャンピングがあるかもしれない。

 「変化は人生の薬味である」という。まあ、変化は君のキャンピング経験の薬味でもある。その薬味をいくらか入れるために、たとえばインディアンのなりをして、インディアン風のキャンピングをしてもいい。インディアンの服装、腰布や鹿革の靴を身につけ、踊り、儀式、ゲームなど、インディアンの活動のプログラムを行なう。インディアン式の料理をし、そして手製のティピーやウイガム(いずれもインディアンの小屋)あるいは木の枝で作ったシェルターで寝る。

 それとも、穴居人式キャンピングはどうだろうか。この場合は、テントや鍋類はしばらくの間用いない。できるだけ器具を用いないようにするのだ。ただ寝るだけの「熊革」(毛布)、スカウトナイフと斧だけにする。リンツーを立て、摩擦で火を起こし、ツイストパンと串焼肉や焼き魚、あぶり肉などを食べる。穴居人の条件の下では、体に気をつける。

 無人島キャンピングはまた一風変わっている。
 ここでは道具を使用してもよい。ロビンソンクルーソーは、座礁した船から品物の入った箱を取ってきた----だが君たちは、できるだけ「陸から離れた」ところに住み、野生の食用植物や果物、自分で捕える魚を食事の一部として食べて生活しなければならない。このような種類のキャンピングは、ウッドクラフト(森林生活術)の心得が十分ないとできない。

 パイオニアキャンピングでは、君の仲間は、昔の開拓者たちの仲間になり、幌馬車のような覆いのついた仮小屋を建て、ほんとうのパイオニアリングをする。----トラッパー式の寝床、丸太のテーブル、橋、いかだ、ダッヂオーブンやバーベキュー用具などを用いて生活する。



(どこで?)
 理想的な班キャンプの条件については、前に1泊キャンプのところで述べたとおりだが、長期キャンプにあつらえ向きのキャンプサイトということになると、さらに考慮しなければならない点が3つ4つある。

 土地、遮蔽物、水や薪などの条件は、もちろんどんな場合にもあてはまるが、ただ実際の敷地の場所となると、いくらか異なるかもしれないのである。というのは、1泊キャンプでは、君は自分の町からあまり遠くへは行こうと思わないからだ。しかし、長期キャンプの場合は、遠い町外れでやるところに最大の魅力のひとつがあるのであり、班の誰もが、一度も見たこともなく、そしてかねてから行ってみたいと望んでいたその場所に、いよいよ行けるのだというところにおもしろみがあるのだ。

 その場所は山岳地方のどこか、または海岸、あるいは特に興味あふれる内陸の湖になるかもしれない。またひょっとしたら、文字どおりの無人島になるかもしれないのである。

 どこに行くか決めたら、君はいくらかの手紙をやり取りする必要がある。君はその敷地の使用許可をもらわなければならず、そして小屋や水、薪などについても、たずねておかなければならないし、そのほか次のような事柄についても、相手の返事をもらわなければならない。
  1. その場所は、多くの人が出入りするところか?(その場所が、ある種の避暑地に近接しているかもしれないと思う場合は、これは特に大切である)
  2. 1〜2キロメートル以内に食糧品を買えるところがあるか?
  3. ほどよい距離のところに農場があって、そこから卵や野菜その他の農作物を買うことができるか?
  4. 簡単に行けるところに医者がいるか?
  5. その場所には、蚊、その他の病害虫はいないか?

 最善の方法は、君のハイキング係、できたら君自身がそのキャンプサイトに行って、自分の目でOKかどうか調べることである。そして次善策としては、その土地のスカウト関係の人々に連絡して、調べてもらうよう頼むことである。知らせがあり次第、将来の奉考のためにノートにとっておく。さらにその地方の地形図や地勢図を入手してその図を研究して、その場所付近の状況を詳しくのみ込んでおくようにする。



(どのようにして?)

●装備品
 長期キャンプの場合の装備品は、少数の例を除いては、大部分は班の1泊キャンプで使ったものと、ほとんど同じである。

 1泊の場合には、ぎりぎりいっぱい必要なものだけ、つまリ2〜3日間過こすのに間に合う分だけ、君は持って行きたいと思う。長期キャンプの場合は、もうちょっと気楽に過ごせるように、携行品を手加減したくなるかもしれない。キャンプはある人々が考えているような、苦労しに行くところではない。それどころか、長期キャンプとは、できるだけ簡単な方法で、できるだけのんびりと、楽しく過ごすようにするための場であり、このため1泊キャンプでは携行しないでもすむものまで持って行きたくなるだろう。

 結論をいえば、長期キャンプ用の個人装備品の一部として、わらぶとん用カバーを持っていくと役に立つ。これは簡単なモスリンか古い布地で作った50cmx150cmの袋である。これに、わら、乾草または枯葉を詰めると、寝心地のいいベッドに早変わりする。

 キャンプ地に蚊がいるかもしれないと思うときは、かやと殺虫剤を持っていく。最悪の事態に備えよ!

 下記のスポーツ用品や、その他君が思いつくままに持っていくスポーツ用品は、いくらか場所をとる。しかし、このスポーツ用品が、キャンプ中の暇な時間を過ごすのに、すばらしく役立ってくれることがわかるだろう。

 本は、君が持って行きたいなら、そうしていい。1冊か2冊、役に立つ本を。安っぽい本は何だかキャンプの精神にしっくりしない。

 班の装備品から考えると、確かに国旗は班がキャンプ地まで携行し、そこで楽しく過こしている間は毎日ずっと掲げるのがほんとうだろう。

 倉庫用テントは、長期キャンプで欠かせないものだが、小型テントでもけっこう間に合う。小さい白布のテントなら熱を吸収しないではね返すのでなおよい。

 雨に備えるために、かまどを覆う炊事場用防水シートと、丸太テーブルやベンチにかぶせる食堂用フライシートを持って行くとよい。

 班の救急箱には、セットになっている品物の他に、さらにいくつかのものを加える必要がある----すなわち、風邪薬、解熱剤、日焼け止め、かぶれの治療薬等々。

 伐採用のおのは、パイオニアリングでは手ごろな道具となる。もちろん、特別に許可のある木だけを伐採する。そしてまた、伐採用のおのは、各種のスカウト技能訓練にどうしても欠かせない、とっておきの道具でもある。

●食事
 メニューはあらかじめ十分念を入れて作っておかなければならない。食糧係は、これでてんてこまいするはずだが、気のきいた者なら班員の母親たちの中の2〜3人に頼んで、献立を手伝ってもらうだろう。

 どんな場合でも、メニューはあまり複雑にすべきではない。

 キャンプの出発前に、食糧を買うことにしている食糧品店や農場主などに連結するのはいい考えだ。その人たちに君の食糧品リストの写しを送り、君が使おうと計画しているものを、彼らが準備しておけるようにする。

 キャンプ初日の食糧は、家から持ってくるように計画する。そうすればキャンプ設営の仕事が楽になる。

●計画作りにおける君の役割
 班装備をそろえ、食糧をまかなう仕事は、担当の備品係と食糧係が計画する。

 冒険計画を立てるのは、君の責任のひとつで、これは次長とふたりで分担してやる仕事である。

 キャンプでは毎日いろいろなことをやるが、そのうちには自然に順序よく区切られているものがある。すなわち、起床、朝食準備、昼食や夕食の準備、テントの掃除、ベッドの整頓、休憩時間および消灯合図というふうに。

 その間に起こることが、君たちのキャンプの性格を決めるのである。

 キャンプ中は、毎時間毎時間を、初めから終わりまで、やりがいのある仕事で過ごすようにしなければならない。君さえそのつもりになって、あらかじめ計画を組めば、そうなるだろう。

 最初の日と最後の日は、何のめんどうもない。最初の日は設営にいそがしい。同じように最後の日は、撒営と荷造りをするのにいそがしい。

 キャンプ第2日目は、普通、キャンプ生活をよくするために費やされる。----君たちをより快適にするためのすべてのキャンプ道具類を作ったりするのである。残りの日々は、おもしろい活動をして過ごす必要のあるものである。何が行なわれるかは、君の創意と工夫にかかっている。

 原則として、長期キャンプではキャンプの中で特別訓練をして過ごすのがいちばんよく、午後はゲームや競点に興ずるとよい。

 午前中の活動については、多くの模範例が第8章で示されている。

 夕方の活動は、班員の好みと携帯するゲーム用資材で決まる。

 次にあらましを掲げるのは、キャンプ生活一般に通じる日程表で、君が計画を立てる際に役立つだろう。

●班キャンプ日課表
6:00起床合図。起床、洗面、朝食の準備を始める。
テントとキャンプサイトの清掃。
毛布や寝袋を外に出して風を通す。
7:00朝食。後かたづけ。
8:00国旗掲掲、朝礼。国旗をキャンプの上に高々と掲げる。輪番交代。
8:15スカウト技能訓練。進級に役立つ技能の練習をする。
10:00できれば水泳を行なう。
11:30昼食準備、昼食。後かたづけ。
13:00休憩。手紙や日記を書いたり、読書をしたりして気楽に遇ごす。
14:00キャンプ周辺でハイキングをしたり、探検したりするか、あるいは午前中に練習した技能を生かして、特別な活動を行なう。
15:30この時間は、もう一度水泳ということになるかもしれない。
17:00夕食準備。
18:00国旗降納。国旗は大切に保管する。夕食。
19:00夕方のゲーム、スポーツなど。
20:30キャンプファイア。
21:30消灯合図、就寝。消灯。沈黙。



●キャンプでの班員の輪番交代
 毎日8時には、輪番交代が行なわれる。炊事長がキャンプサイト清掃係になり、あとのスカウトたちもかわるがわる任務を担当する。

 この表には7つの任務しかないことに注意。班長はこの表には含まれていない。班長はキャンプ全員の「班長」であり、応援を必要とするところであれば、すぐ手伝えるようにしているのである。

 炊事長は、料理の仕方に注意深くしたがって、時間どおりに食事を出せるように責任を持つ。

 炊事助手は、炊事長のそばにいて命令どおりに働き、必要なことをやる。

 消防係は、炊事係より先に炊事場にきて、炊事がすむまでそばで待機する。

 水係は、炊事係たちが使う水を用意し、班の水桶を1日中満たし、そして食事ごとにテーブルに飲料水を置くようにする。

 炊事場整理係は、炊事が終わるとすぐに、後かたづけをするために湯を沸かす。そして炊事場と食堂を清掃し、次の食事に用いるすべての炊事用具と食器類をきちんと整理しておく責任を持つ。

 炊事場整理助手は、炊事場整理係と協力して、その命令どおりに働く。

 キャンプサイト清掃係は、テントがきちんとしているか点検し、班のキャンプサイトー帯を常にきれいにしておく責任を持つ。
氏名1日目2日目3日目4日目5日目6日目7日目
1炊事長サイト
清掃係
炊事場
整理助手
炊事場
整理係
水係消防係炊事助手
2炊事助手炊事長サイト
清掃係
炊事場
整理助手
炊事場
整理係
水係消防係
3消防係炊事助手炊事長サイト
清掃係
炊事場
整理助手
炊事場
整理係
水係
4水係消防係炊事助手炊事長サイト
清掃係
炊事場
整理助手
炊事場
整理係
5炊事場
整理係
水係消防係炊事助手炊事長サイト
清掃係
炊事場
整理助手
6炊事場
整理助手
炊事場
整理係
水係消防係炊事助手炊事長サイト
清掃係
7サイト
清掃係
炊事場
整理助手
炊事場
整理係
水係消防係炊事助手炊事長



(長期キャンプで)
 いよいよ出発だ。全員集合。用具を全部荷造りする。忘れ物は何もない。

 全員が列車かバスまたは自動車に元気よく乗り、夏の冒険を求めて出発する。そしてついにキャンプ地へ着くのである。

 これまで何回も行った班の1泊キャンプの場合とまったく変わらない設営組織を使って、君のキャンプは今、理想の地に立つのだ!

 炊事係は、キャンプの最初の食事を作るのに一所懸命である。他の者たちはそれぞれ自分の任務について働き、それが終わったら皆が寝心地よく泊まれるようにベッドを作る。

 夕食を食べ、食器を洗う。ちょっと休憩して、それからキャンプで最初のキャンプファイアをする。

 ここにはもう、ありふれた生活などはない。まわりはみんな、親しい友達ばかりだ!そしてこれから過ごす日々の、どんなに楽しいことだろうか。

 キャンプファイアは短い。君たちは皆、1日中興奮していたし、それに旅行や作業で疲れている。「一日の終わり」を静かに歌う。就寝「おやすみなさい!いい夢を見なさい!」

 たぶん君は、すぐに寝つかれないかもしれない。たぶん君は突然自分の負っている責任----これから何日間か自分と寝起きを共にする班員たちに対する責任の重大さを、ひしひしと感じるかもしれない。「私により強い指導力を与え、彼らのすべての望みを満たしてやる能力を与えてください」と君はひょっとしたら心の中でお祈りをささげるかもしれない。それから、君もまた眠りに落ちる。



(キャンプの手入れ)
 1日目はキャンプの設営に費やした。2日目にはそれに手を加えて、キャンプ生活をより快適にするすべてのものを取り入れる。朝食を終え、すべての後かたづけが終わったら、すぐに全員作業にかかる。

 最初にすることは、昔の探検者たちが未知の土地へたどり着いたときにやったのと同じことである。つまりその土地の上に国旗を掲げて自分たちのものにするのである。そこで旗ざおを取ってくるのだ。急げ。先端に小さな環か滑車をつけ、それにロープを通し、地面に穴を掘り、その中にさおを立てて埋め戻し、その周りの地面を踏み固めて、最後に石を積む。

 気をつけの姿勢で、国旗がさおの先まで上がるまで注目し、次いで国歌を歌う。

 君たちはキャンプ地を手中に収めたのであるから、今度はそれに手を加えてよくするため、数多くのことに着手してもかまわないわけだ。次にいくつかの例を述べてみる。

 まず炊事場について考えよう。

 石か丸太などで、頑丈なかまどを作る。または地面を掘って作る。使い古した石油缶か油缶でも、けっこういろいろな形のキャンプ・オーブンができる。上部の熱は底の火と同じように大切であることを忘れないこと。

 火ばさみと火ぼうきがあれば、火を扱ったりかまどをきれいにするとき、実に便利だ。

 薪を積むときは、太さや大きさなどで分類してそろえて積む。雨にぬらさないように、その上にシート類をかけておく。

 薪割り台を欠かしてはならない。薪割りをしないときは、それに斧を立てたままにしておく。

 鍋類用の棚を作る。それは調理台にも兼用できるような構造のものにする。コップ類は低い木の枝にかければよい。

 炊事場用の冷蔵庫も必要である。それは「冷却穴ぐら」の要領で作ることができる。すなわち60cmx60cmx60cmの穴を掘り、側面は石を並べ、木でふたをする。小川などがキャンプの中を流れているときは、「穴ぐら」を土手に掘ってその側面に石を並べると、さらによいものができる。その冷たい水は、牛乳やバターの容器および防水の肉袋などを冷たく保ってくれる。

 炊事場についてはこれだけにしよう。こんどは君たちのすみかの、他の部屋について述べよう。

 各テントの外側に、靴の泥落としを置き、テントの入リロのすぐ内側に靴かけを置く。靴を使用していないときは、すべてその上にかけてきろんとしておき、邪魔にならないようにする。

 タオルかけを立てるか、あるいはテントの裏側にタオルや衣類を乾かす物干し用ロープを張る。

 ベンチつきの食卓は、多くのいろいろな方法で作ることができる。ある方法では、地面に穴を掘ってそれを作り、またある方法では、棒とまっすぐな枝を組み合わせて作る。

 最後に、キャンプの中央部こ日時計を設けたいと思うかもしれない。それはまっすぐなポールを、その先が北極星を指すようにして地面に打ち込んだものである。

 これらの器具を作るのには、ほとんど1日かかる。しかし、時間をさいてキャンプ地周辺の探検ハイクもして、自分たちの環境を知るようにする。

 それから夕食、休憩、キャンプファイア----そうして第2日目は過ぎていく。



(キャンプ生活)
 初めのいそがしい2日間が過ぎたら、君たちは計画どおり普通の日課にしたがって生活する。

 万事が時を刻むように正確に運ばれる。食事はちょうどその時間に準備され、みんなが率先して日々の活動に万全を尽くす。朝から夜までキャンプには笑いと楽しみが絶えない。

●朝
 君たちのキャンプの1日が始まるのは、定められた起床時間(6時か6時30分)きっかりである。君の「おはよう」という大きな声か、ラッパ係の吹く起床ラッパまたは角笛で始まるのである。

 班員たちははね起きて行動を開始する。それから洗面をする。1人でも「後で洗いなおすからいいよ」などといういいかげんな洗面ですまさせないように。首も耳も歯も、そして同時にその他のところもすべて「清潔」にしなければならない。

 洗面の後で1日の仕事が始まる。炊事係は火を起こして朝食の支度にかかり、後かたづけ係は後かたづけのために待機する。すべてが予定表のとおりである。

 段取りがあれば、その日の当番の2人の班員は、近くの農家に前もってたのんでおいた牛乳その他の品物を取りに行く。

 彼らは朝食の時間に間に合うようにキャンプに帰ってくる。もし帰る途中に店があれば、同時にその食糧品も買い、ついでに翌日の分も注文しておく。でなければ、その日の別の時間をみはからってその雑用を足すようにする。----できれば、1日の活動が始まる前、つまり朝のうちがいい。

 朝食が終わり、鍋や皿を洗い、テントも整頓された。全員が正装で旗ポールのところに集合して朝礼を行ない、国旗を正しく掲揚する。

●午前
 キャンプの午前----これこそ君の班員たちを助けてスカウト活動での進級を遂げさせる絶好のチャンスであり、かつ絶好の場である。すなわち、初級の者は2級を、2級の者は1級を、そして技能章や特修章の獲得を目指して手近させることだ。

 しかし、そのために無理をして、つまり進級のためにわざわざ2、3時間も割くというようなことはしないこと。キャンプ活動そのものが進級活動なのである。それはただ、スカウトが何をやり遂げたかを調べて進級課自のチェックをするだけのことなのである。たとえば、ある者は朝食用の火を焚き付けることによって2級章課日の火を起こす技術の単位を取り、ある者は、班員の食事を献立どおりに作ってやった後で、1級章課目の料理技術の認定を受ける。

 しかし、必修課日の中には、日課の範囲外で取り扱わなければならないものもある。すなわち、救急法、追跡術、自然研究、信号法など少なくない。

 このスカウト技能のいくつかは----特に信号法や救急法は----班員たちを小グループに分けて行なわせることができる。互いに助け合い、互いに指導し合うのである。その他のものは班全体で行なうことができる。

 食べられる植物を例にとる。スカウト1人だけを食用植物探しに出さないこと。----全員で探しに出て、昼食の用に十分なだけ取ってこさせるようにする。

 地図作りの場合。これも1人だけに班のキャンプサイトの略図を描かせないようにする。----全員に発表して言う。「班の日誌にのせるキャンプサイトの略図を、誰がいちばんよく書けるか勝負してみよう!」

 追跡術の場合。宝物のありかを決めて、全員に宝深しの楽しみを味わせるようにする。そういうふうに次々とやるのである。

 これらはほんの少数の例である。第8章には、まだ多くのことが書いてある。

 できたら、午前中の活動が終わった後で泳ぐ。ひんやりした水に飛び込むのは、誰だって歓迎するところだ。しかし、水泳の安全ルールは絶対に守ること。

●正午
 昼食は手早くできる簡単な食事である。この食事を簡単にすることによって、君たちのすべての活動のための時間をあけることができる。しかし、もちろん、その準備にはいくらか苦労がいるし、同じ班員たちにその炊事を毎日させることは公平ではないだろう。だから、こういうことがないように、キャンプがいったん設営されたら、さっそく輪番交代にとりかからなければならないのである。1週間、順番にやることによって、各班員は班の炊事のやり方を学ぶ機会を得ることになる。先に輪番交代表の模範例が掲げてある。

 全員に、昼食の後かたづけ後は、必ず休憩するように強く言う。歩きまわるのではなくて、横になって休憩らしい休憩をするのである。

 ある者は休憩時間に、おしゃべりをしたいかもしれない。ある者は本の1章くらいは読みたいかもしれない。またある者は日記を書いたり、家族への便りを書くのに夢中になっているかもしれない。やらなければならないつくろい----半ズボンの穴につぎを当でたり、ボタンをつけたり、靴下のほころびを繕ったりする仕事があるかもしれない。

 ある班員は昼寝をすることに決めるかもしれない。その時はそうさせればよい。昼寝しただけ夕方はもっと元気が出るだろうから。

 休憩時間は1時間もあれば十分だ。あまり長くなると休憩が終わっても皆だらけてしまって、日課にも支障をきたすだろう。

●午後
 休憩がすんだら、ぴしゃっとその気分から抜け出し、それから何か活動らしい活動を始める。

 午後のプログラムは、キャンプ地外で行なうほうが極めてふさわしい。----周辺地域をハイクしたり、湖の岸をたどっていったり、小川の源をたずねたり、丘の頂に登ったりするのである.あるいは動植物を採集したり、パイオニアリングや長距離信号法で妙技を披露しあうことになるかもしれない。

 班員たちの中に写真撮影、昆虫採集、鉱物採集等々の専門的な趣味を持っている者がいれば、これは彼らを満足させてやれるちょうどよい機会である。

 もちろん、全員が午後の活動に参加しなければならない。けれども、ときには1人か2人の班員を監視のためキャンプに残す必要が生じるかもしれない。----特にそのキャンプが道路に近接していて歓迎されざる訪問客が来る可能性のある場合はそうである。

 君は、よその班で起こった出来事が、自分の班で起こるのはいやだろう。たとえばこういう場合である。キャンプに戻ってきてみると、炊事場のテントがめちゃめちゃになっており、食糧がひとつ残らず消えている。テントのウォールには「なぜビールも置いておかないんだい?」という張り紙が張ってあった。こんなことがあるから、理想的なキャンプ生活をするには、どうしても人里離れたところに場所をとる必要があるのである。

●夕方
 夕食と夕食の後かたづけがすんでも、暗くなるまでにはまだ1時間ほどある。その時間を利用してゲームやある種のスポーツをして過ごす。幅跳びや高飛びの場所、トラックのある陸上競技場を急ごしらえして、班員たちに競技をさせる。彼らがアーチェリーが好きで、道具を持ってきているときは、その夕方はすばらしい活動をすることができる。ロープがあると、なわ作り競争や投げなわをすることもできるだろう。これを班の特技のひとつにしてもいい。野球ボールとバットがあれば、たくさんの楽しいことが始まる。

 日没時に旗ポールの周りに集まる。国旗をおごそかに降ろす。

 あたりが薄暗くなり始める。キャンプファイアの時間が近づいた。班員たちに、営火場に来るときには、セーターや毛布などで暖かな服装をしてくるように言う。その晩は冷えるかもしれないからである。

 キャンプファイアは簡単な儀式で始まる。たとえば君の班独自のもの、または「炎が燃え上がるとともに、われわれの精神と思想を、その炎とともに、より高いスカウティングの理想に向かって高めたまえ」という短い文句で始まる。それから前に述べた方針どおりに、陽気に楽しく、交歓を始める。

 キャンプファイアの間に、君は簡単な打ち合わせ会を開いて、翌日のプログラムについて話し合い、特別な任務の割り当てを行なう必要がある。

 火床の周りで消灯の合図を吹く。ラッパによるときは、消音器をつける。火を消せ!テントヘ帰れ!

 9時30分。1日は終わった。「おやすみなさい。ぐっすりおやすみなさい!」



(雨天のとき)
 そうだ! 雨が降るかもしれない。その時はもちろん雨天でもさしつかえないようにプログラムを変更しなければならない。

 雨天なら雨天なりに、できるだけのことをすればいいのだ。雨に備えておけば、雨でキャンプが混乱することはない。

 雨が降り始めたら、何よりもまず自分の装備品を考え、雨に弱いものはカバーをかぶせる。鍋類は外に置いてもかまわないが、衣類やおの、なたのような物は、中に入れなければならない。班員たちに、自分の用具を始末するだけでは十分でないことも教える。つまり、雨になったら自分の物だけでなく,同僚の物も手伝って運び入れる義務があるのだ。

 それから次はテントのことだ。テントの周囲を流れる雨水だけでなく、テントに向かって丘の上から流れてくる雨水もはかすような手立てを講じなければならない。

 夏に時々どしゃ降りがあるような地方で野営する場合は、テントの周囲に十分な溝をめぐらせる必要がある。まずテントの周囲に近接させて、スコップで深さ10〜20cmの溝を掘り、次にその溝の10cm外側に、同じような溝をもうひとまわりめぐらし、こうして掘り起こした芝(土)をくずさないようにして講の外側のふろに並べる。このようにしておくと、キャンプが終わったときに、芝を元に戻すことができるのである。

 これ以外には、テントを雨水の侵入から守る方法はないと思われるとき以外は、テントの周りに必要以上に溝をめぐらすことは禁物だ。ただ掘って土を放り出すというふうな、だらしないやり方であると、結局はひどい土砂崩れになる原因を作り出すかもしれないのだ。

 テントが濡れると、布地とロ一プはちぢむ----だから、親綱をゆるめることを忘れないこと----さもないと、テントの杭は地面から抜け出てしまう。テントが防水質のものではなく、水をはじくだけのものなら、雨は細いしぶきとなって入ってくるかもしれない。しかし、あわてることはない。テントがほんとうに丈夫であれば、布地がすっかり濡れてしまうと同時に、しぶきは自然に止まる。

 テントの内側にしずくが垂れるときは、なお始末が悪い。こんな場合、普通なら指をその個所に当て、しず<が布地を伝って地面に流れ落ちるようにすれば、濡れないですむかもしれない。しずくは内側に入ってこないで、ずっと布地を伝って流れ落ちるようになる。雨の最中は、布地の内側には触れないように、班員たちによく言っておくことだ。内側まで濡れているかもしれないし、触れた部分から雨が漏るようになるからである。また、布地にくっつけて置いてある装具類は、全部移すこと。



(雨の日の活動)
 以上の防水対策がすんだら、雨天向きに計画された活動を始めよう。

 テントの中でも出来るようなスタンツや競点をする。ロープ結びや組み継ぎの上手なやり方、簡単な救急法、音または懐中電灯を用いての信号法などの実習をするか、あるいは小刀細工のコンテストやキムスゲームをする。アコーディオンかハーモニカなどの楽器は、雨の日には、まさに千金の価値がある。班員たちに歌わせることができたら、それこそしめたものだ!

 それとも、雨の中で元気に鬼こっこでもしたらどうだろう。水泳パンツをはいて、どしゃ降りの中に飛び出す。班員たちは、飛び回っている限りかぜなどひきっこない。そのゲームを十二分に楽しんだら、濡れた水着を脱ぎ、テントの中に入って、よく乾布まさつをしてから、乾いた服に着替える。

 雨の中のハイキングは、適当な雨具類さえ持っていれば、興味津々たるものだ。君たちはむせびかえるような大地のにおいをかぐことができる。樹木はよりあざやかに見え、草葉はより生き生きとしているように見える。

 降っているのが温かい夏の雨であれば、炊事係は水着のままで働いてもかまわない。

 冷たい雨のときは、もちろん雨具を着る。食卓の上に防水布を広げれば、準備完了である。さもなければ食事はテントでするが、その場合はできるだけ入り□の近くにすわるようにする。

 晩のキャンプファイアの時間をテントの中で過ごす----火は用いない。雨降りの晩には長いことやる必要はない。雨の降る音を聞くと、なんとなく眠気を催してくるものだし、皆だって早めに床につきたいと思うだろうからだ。カンバスにあたる雨滴の音は子守歌となっで、皆はやがてすやすやと眠りにつくだろう。

 だが、外はどしゃ降りでも、テントをきつく閉めてはならない。換気は必要である。風が後部からくるときは、前のほうは開けたままでもよい。そうでない場合は、テントの入リ口の下のほうを閉じて、上のほうは開けておいて、垂れ布を「窓」のように広げておけばよい。



(キャンプをたたむ(撒営))
 長期キャンプをたたむ方法は、1泊キャンプの場合と変わりはないが、1泊キャンプの場合よりはめんどうなので、時間を早くしてとりかからなければならない。

 まず、間に合わせに作った道具の取り外しから始め、旗ざおはいちばん最後にはずすようにする。それから個人装備品、炊事用具、そしてテントの荷造りをする。

 キャンプ地の清掃が終わり、リュックサックの準備もできて、あとは肩に背負うだけになったら、旗ざおの周りに集合し、一応の儀式をして国旗を降ろす。それから旗ざおを取り外して、その跡をきれいにする。

 個人の土地にキャンプしていたときは、全員その地主の家まで行って、班のために土地を自由に使わせてくれた好意に対し、班のイエ−ルを高々とあげてお礼する。

 キャンプは終わった。キャンプ撤収のときに忘れてはならないことは、ただ2つ、すなわち、
  1.キャンプ地を、キャンプ前の状態よりきれいにして、何も残さない。
  2.協力してくださった人々に対する感謝。

 この2つである。


●移動キャンプ

 どのキャンピングよりも形が複雑で、どのキャンピングよりも大規模な準備とすぐれた指導力を必要とするものが、移動キャンプである。

 班にとっては、長期キャンプを行なうことでさえ容易ではないのに、移動キャンプはそれよりはるかに骨が折れる----より重い責任を負い、より多い費用がかかり、移動の途中で遭遇する土地を知っておく必要があり、特別仕立ての装備がなければならず、食糧を確保する手配もしなければならない。

 移動キャンプは、断然「古参」のスカウトたち向きのものである。それは結束の固いスカウトたちをかかえる古い班だけで行なうべきである。(日本連盟では、移動を伴うベンチャーキャンプおよび奉仕を中心とするワークキャンプなどは、ベンチャー隊以上に限るよう指導している)

 君の班が少なくとも3年の歴史を持ち、隊の夏季キャンプや班の長期キャンプなどのすべての訓練を経ているときは、移動キャンプを行なうことができる----それなしではだめである。その場合でさえ、成人の指導者がいっしょにいて、最終責任をとるようにしなければならない。

 君の班に資格があり、その気にさえなれば、このようなキャンプの段取りをつけてみるのもよかろう。でなければ、あっさり忘れることだ。



(計画作成)
 移動キャンプの場合は、計画は早めに立てることだ。どこに行くか、どのようにして行くか、何を見るかを決めて、費用をはじき出す。

 たぶん君たちの住んでいる地方のどこかに、風光唱媚で名所旧跡に富んでいるところがあって、君をひきつけるかもしれない。あるいは君の班はさらに足をのばして、他の地方まで遠征してみたいと思うかもしれない。

 このようなキャンプの計画は、その移動方法によって大いに異なる。徒歩旅行をしようとするときは、その移動距離は必然的に狭くなる。自動車を利用できる場合は、旅行の長さは自動車を利用できる日数によって決まる。

 道具を持って徒歩旅行をするときは、平均1日に15〜20km以上を歩こうと考えてはならない。カヌーやボートを利用しての族行は、25kmが最高限度かもしれない。自転車の場合は、50kmも60kmも走ると疲れるかもしれない。自動車旅行の場合は、1日に300kmから400km以上も走ると、楽しみどころか、うんざりしてしまうだろう。

 君たちはこれくらいの旅行ではつまらないと思うかもしれないが、いざ旅立ってみると、やはり長い族行よりは短い旅行のほうがいいと思うようになるものだ。結局、大事なことは、どれだけの距離を行くかではなくて、どのような経験をするかということである。



(隊長の役割)
 移動キャンプの行き先や利用する輸送手段について、君の腹案がまとまったら、すぐに君の隊長に話しを持ちかける。そうすれば、隊長は折を見て地区や県連盟にはかって、いっしょになってその旅行が実現可能なものかどうかを決める。そして計画がOKなら、君たちのために成人の指導者を見つけてくれ、最終的計画を立てる手伝いをし、連盟を通じて必要な許可証を手に入れてくれるだろう。(日本連盟では、スカウトや班、隊が県外でのキャンプを計画するときには、所属県連盟事務局に所定の書類を提出して「県外旅行紹介状」の交付を受けることになっている)

 もし、この種の旅行が周到な計画のもとに実行されるならば、この旅行をいつでも行なう用意のある班として、忘れがたい貴重な経験を残すことになる!
班長のてびきを読んで

 最近のボーイスカウトは、あまリキャンプをやっていないようだ。特に班キャンプができないようである。もしかしたら、それがスカウティング衰退の一因にもなっているのかもしれない。以前、イギリス連盟が積極的にキャンプをするようにしたらスカウトが増加した、という誌を聞いたことがある。もっともっとキャンプをしよう。

 しかし、実際にキャンプをするとなると多くの問題がある。昔は気軽に班キャンプをしていたものだが、最近はそうもいかないようである。

 キャンプにおいては、ハイキングよりも役割分担が重要になる。班長には、より強力なリーダーシップが望まれるが、最近の少年たちのチームワーク不足に加えて「キャンプが嫌いだ」というスカウトもいる中で、班をまとめるのはたいへんなことである。

 しかし失敗することを恐れてはならない。スカウトたちに少しでも「キャンプをしたい」という気持ちがあれば積極的に実施させよう。レベルを上げるには経験を重ねるしかないのである。ただし、自分たちで計画、実行し、評価反省させることを忘れてはならない。このプロセスを経験し身につけさせることがスカウティングが野外活動をする目的であるからだ。

 この章の最後に「隊長の役割」と題した段落がある。隊長の役割はここに述べられたものだけである。余計な手出しをしてはいけない。