ウルフカブス ハンドブック

第13食

編み物と組み物
倹約
模型作り
コレクション
スクラップ・ブック
ウルフ・カブの楽隊(バンド)


●編み物と組み物

カブとして,できなければならないものの一つに,編み物があります。これは決して難かしいものではありません。これが上手くできると,自分のためにも他人のためにも大変役立つことができます。
 君たちが将来,開拓者とか探検家になって,荒野に出ていった時,これはとても役に立つものです。
 北極探険にいったシャックルトンの隊員たらは,みな自分の靴下や手袋を編むことができました。多くの狩人だの流行者や兵士で,特にスコットランドから来た人々は,自分の靴下を自分で編むことができると聞いています。
 編んだり組んだりする術を知っていることも,たいへん便利です。

 私が,カシミールに旅行したとき,とても山が険しくて、イギリスの靴では上れないことがわかりました。で私は,そこの住人がするようにしなければならないのでした。それは「チャプリス」を履くか,または草で靴を編むことでした。
 これを足に履くととても楽でした。そして山の横っぱらを上ったり下たりする足がかりを与えてくれるから安全なものです。これならハエみたいに天井でも壁でも歩けるぞ! と思うくらいでした。
 ですが草で作った靴ですから長持ちしないこは言うまでもありません。2日目か3日目に新しいのがいるのです。
 その結果、これは自分で作るほかないと思ったので,私は長い,草のロープを編んで,これを首に巻き付け,そして靴を編みました。しかもこれは毎日歩きながら編んだものでした。

 これとおなじように,バスケットを編めることも,たいへん重要なことだと知りました。

 未開地の山中では,旅行鞄やハンドバッグなんか買うところはありません。ところが,鉄砲で獲物を撃った時,その肉を入れたり,魚や果物や,イチゴ類や野菜を入れる入れ物がほしくなるのです.
 あたり一面に小枝やつる草がいっぱいあります。問題はこれを利用してどのようにバスケットを編むかということにあるのです。これはそんなに難かしいことではなく,むしろ楽しいことなのです。

 もちろん,文明国では自分で作ったそういうものを売って,たくさんのお金を儲けることがでさます。そのことは君のためにもなるし,ご両親のためにも,また隊のためにもなります。

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●倹約

 次にあるテストの「倹約」,これはその意味を理解していることと,それを実行していることを求めているので,ちょっと難かしい問題であります。

 この「シュリフト」(倹約)という言葉は,実はアイルランドからきた言葉です。この島の人々は「シュリフト」とは何かということと,その強さおよびきつさ,そして人のお世話にならない意味をよく知っています。「ハマカンザシ」という植物がありますが,その花を「シュリフト」と呼びます。その訳は,これはどんなに狭い土地でも,どんなに風のきついところでも寒い風の中でも立派に生きていて,人々に笑顔を見せているからです。

 ですから,君たちも自分の持ち物の全体を大切にすることを学ばなければなりません。食物・着物・こまごました持ち物,それにお金,そういうものを大切にするのです。たとえば芝居につかう自分の剣やその他のものを自分で作ることができるのならば,これを店で買ったり誰かから貰おうなどと考えるよりもとてもようことです。これと同じように隊でも隊の者たちの手で・・・・なわとびのロープだの信号旗だのを・・・・買わないで,これを作ることがよいのです。君たちは自分のユニフォームだの衣服に誇りを持ちたいでしょう。そのためには不必要にそれを破いたり洗濯や修理のため,ひとの手をわずらわすようなことはしません。食物も粗末にしてはなりせん。

(訳者記。以上の部分,カナダ本は次のようになっている。それは,英国本の旧版での文でもある。)
・・・・バカな子供はお金を握ると,すぐ近くの映画館に行き映画を見て時をすごします。
 賢い少年は,それを貯金箱に入れて何か愉快なことに使うまでそれを貯めておきます。
 けれども,もっと良い使い方は,それを銀行に預けることです。その訳は,君が後に相当な預金を持ったとき,銀行は預けたお金に余分のお金を足してくれます。これを利子といいます。これは,もとからの君のお金これを「資本」といいますが,それに,ひとつも手をつけないで,自由に使うことのできるものであります。 お金は,貯金箱に入れるよりも,この方がずっと安全です。その訳は,銀行が責任を持つからです。利子を払うため多くのお金を扱うからです。・・・・(以上)

 少しばかりのお金でも大切にしなさい。それはもうすぐ何ポンドという大金になるからです。

 アスターという人は子供の時,ホイッスル(笛)やフルート(横笛)の作り方を学び,作った笛をわずかなお金で売りました。そしてそのお金を銀行に預けたのです。2〜3年たってから彼はそのお金が大金になっているのを知りました。そうしてとうとう世界で一流の大金持ちになったのです。

 若いオオカミは,秋になると自分の食べる食物よりも,もっと沢山の食物を取るのです。
 それには,チドリを捕まえるところや,カモやガチョウを追いかける話があります。
 ガチョウは夜になると敵が隠れそうな岩とか薮とかから,遠く離れた砂丘にねぐらを移して広いい砂浜に,群を作って寝るのです。
 夜が真っ暗になると,四つの影がいちばん近い黒い岸からだんだん近づいてきます。これがゆっくりと砂丘に這いながらやってくるのですが,それは何時聞かかってもへこたれないほどの辛抱強さで這ってきます。
 這い方は,姿勢を低くしてゆっくりゆっくりしたものですが,その四つの影は鳥の群にだんだん近づきます。いよいよ突撃にかかるまでそうします。突然恐ろしい叫び声や翼の音が水の上にします。恐れおののくガチョウの叫び声が辺りに聞こえます。
 間もなく四つの影は森の方へ歩いて帰っていきますが,それぞれ立派ガチョウの首をガッチリと口にくわえ獲物を肩に背負っています。

 時としてオオカミどもは,めざましい組み討ちがしたくなると,岩の上で日なたぼっこをしているアザラシを襲うことがあります。オオカミどもは,アザラシと海との間を這って行きます。これは危険の合図が発せられたとき,アザラシどもが安全な方へ逃げる道をまごつかせるように,その逃げ道を塞ぐことになります。オオカミが敵を掴むことはめったにないことで,ふつうは何回も何回も,がぶっと噛みついたり深手を負わしたりして,しまいに殺すのです。けれどもアザラシの場合はこの獲物が海に逃げるのを防ぐため,しっかり掴まなければなりません。アザラシどもは唸って噛みつくので,オオカミどもはいよいよ張り切るわけです。
 こんなにガチョウとかカモとかサカナとかアザラシなど,たくさんの食物があるにもかかわらず,オオカミどもは,もっともっと食べきれないほど多くの食物を取るのです。
 だからといって,オオカミはバカではありません。やがて寒い冬が来ると,地上は深い雪に覆われ川という川は,氷が張って食物を探すのに骨が折れることをよく知っているのです。
 ですから,暖かい日のあたっているうちに,食物をこしらえるのです。できるだけ多く殺して食物にします。子供たちは年よりのオオカミからそう教えられるのです。夜昼なしに狩りをした後,その殺したものは岩と岩との間にある隠し場へひきずりこまれるのです。
 岩の間の割れ目の中にそれを押し込んだ後,食べ物の上を雪を積んで隠します。これは,その臭いによって他の動物が掘り出すのを防ぐためです。それと同時に食べたい時がくるまで凍らせておくことにもなるのです。

 これはウルフ・カブの皆さんがするのと全く同じことですね。お金が儲かるときは,それがいつであろうと儲けておき,それを安全な銀行に入れておきます。決して使わないのです。オオカミがするように,いつか不幸な日がやってきた時,それを出して使うよう覚えておきます。こんなに注意深くしまっておくならば困ったという目にはあいません。

 けれども,君のお母さんのところへ行って,銀行にあずけるから6ペンスくださいとねだるのでは,まだ十分んとはいえませんよ。君は「自分のカ」によって貯金しなければなりません。すなわち,おいしい物を買う代わりに,毎週自分の小遣いを決まっていくらかとっておいて貯金します。あるいは誰かのために働いて僅かのお金を儲けて,それにあてることも多分できるでしょう。こうして少しずつでも貯金をやり続けていくうちに,貯蓄銀行でのお金の高はかなりの金額になります。「困った日のために」。

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●模型作り

 けれども,いっべんに大金持ちになろうと考えてはなりません。大事は小事よりであります。

 ポンドを儲けたければ,ペニイから始めなさい。これはちょうど大男になる前に,君が小さい少年であらねばならないのと同じわけです。
 大きな船を作りたいならば,その前にその模型を作らなければならないのです。
 君たちカブのたいていの者は,将来何かでっかい物を作ってやろうと思っているでしょう。飛行機だとか家だとか船だとかエンジンだとか・・・・・。
 けれども,何を作るにしても模型ということがその第1歩なのです。

 あのテイの大橋も初めはスケールの小さい模型から作られたし,モウレタリア号という大汽船も,おもちゃのような小さな模型から作られました。
 ですから,大きな物を作りたいと思うカブは,まず小さい棟型から作らなければなりません。大きな箱を作るには,小さいものからまず作ります。
 家を作りたければ,ボール紙で作りはじめます。または粘土で軍艦を作ったり,ブリキでエンジンを作ったりするのです。

 また,模型を作りはじめる前に,その輪郭を製図することができれば,これもまた大きな助けとなります。製図はだれでも少しぐらいできますね。これは練習さえすれば,すぐ上手になれます。
 スカウトはだれでも地図の製図ができなければなりません。そんなことができなかったら,バカと言われるでしょう。

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●コレクション

 私は,どのカブも何かのコレクションをしていると思います。もし,まだしていないならば,早速やりだすとよでしょう。外国の切手とか貝類だとか絵はがきなど。

 これらのコレクションは,とてもきれいです。ですが,もし自分で描いた絵を集めるならば,もっと面白いですよ。
 例えば花の好きな人なら,自分が見つけた色々の花の絵を描きます。色鉛筆か絵の具を使って描くのです。このようにして描いた花は摘んできた花のように色が褪せることは決してありません。自分が探してきたどんな花でも素晴らしい記録として役立つでしよう。

 人によっては,花の絵を描くことは,とても難かしいことかもしれない。そういう人は色々の国の旗のコレクションを作ればよですね。
 そういうものをカブは,色鉛筆で紙切れに描くことができますね。その上に,イギリスの海外領土の色々の旗や海軍の信号旗などを絵が添えることができる。

 コレクションについてもっと知りたければ,コレクション章をとるために勉強をはじめるとよくわかります.

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●スクラップ・ブック

 カブたちは,スクラップ・ブックを作っていなければなりません。絵だの写真だの、また新聞からの切り抜きをすることはとても面白いものですね。これらのものを全部,整理して貼り付けます。この貼り付けた本は何年かたった後,持主にとって素晴らしい興味となることは疑いありません。

 私は,一生涯スクラップ・ブックを作り続けたから良くわかるのですが,これは,ただ面白いだけでなく,永い年月に起きた様々のことがらを思いおこすときに役立つことがたびたびあります。
 私の本は,私の父と母の写真に始まり,その次に私がまだ3才のときに描いた絵があるのですよ! 絵のできぐあいが問題ではなくて,そんな小さい子供の時,絵を描こうとしたこと,それを見るのが愉快なのです!
 しかし面白さの中のいくらかは,そのスクラップ・ブックを美しく製本することと,本の中にいろいろの者を挿し入れることにあります。本をきれいに美しくきちんとすることは,美術というべきものです。私はこうしたやりかたでこの作業をや始めたのです。

 できれば,ボール紙のアルバムを作ります。その訳は,本の中に挿し入れた物によって,平たい絵薄い紙が膨れあがるからです。しかし,どんな本でも作らないよりは良いこともちろんです。
 一番良いのは,役12インチと8インチ大のアルバムを作ることです。それより小さいと,直ぐいっぱいになるし,また大きい写真を入れたいことがしばしばあるからです。

 表紙には,君の名前とその本を作りはじめた日付を書きます。始める日は,その年の始め,または君の誕生日が,まず一般に良いようです。そうするならば,私がしたように,毎年一冊ずつの本ができます。あるいは,君の一生を完全に二部にして残します。
 たとえば,君が在学中であるならば,学校の絵を貼る本を一つ作ります。それには学友だちやスポーツや音楽会などのプログラムを貼りつけます。・・・・君が大人になった時,それを見たらとても懐かしいでしょう。もう一つの本は,言うまでもなく君の家庭生活と休暇のことをはった第2巻です。

 けれども,スクラップ・ブックを作るということは,むろん余計な仕事になりますから,そのために,カブの他の作業やゲームの妨げになってはいけません。ですから,始終貼りつけるノリや紙ぎれを切ることばかりで遊んではならないし,また部屋の中を散らかすこともよくありません。 >
 これを防ぐ一番よい考えは(私の発見ですが)かなり大きい封筒を探してきて,その中にこれはとっておこうと思うようなものを,全部入れておくのです。
 キャンプでのスカウトの絵だの新聞にあった面白い歌だの,いろいろな写真などを,こまめに集めておいて,雨の日の暇な時間に分頚する用意をしておきます。

 自分で写した写真があるならば,これはもちろんとっておくものとしては申し分ありません。けれども,お金がかかりますね。そこでいちばんよい方法は,なんでもみんな自分の手で絵に描いて本に入れることです。

 君がもし,絵が上手でこれができるならば,たぶん君はテストを受けに行き,そして美術章を取ることができるでしょう。いよいよ「切り抜き」をその本に貼ることになると,ノリがほしくなりますね。これは麦粉や澱粉から,たやすく作れます。作り方は次のようにします。
 麦粉(または澱粉の塊)を茶さじに一杯半ほどすくい小さい鉢に入れます。そして冷水を少々注ぎ,薄い粘っこいノリのようにこねるのです。次に熱い湯を注いでこねまわす。だんだん濃くなって青みがかったノリになるまでこねる。このとき腐るのを防ぐため,少々チョウジ(丁子)を入れるのを忘れないでください。
 この他,ノリの刷毛とハサミが一つと紙屑を入れるカゴのようなもの(紙の切り屑や裁ち屑で部屋の中が汚れないため)と,絵の下に名前や日付を書き記すための鉛筆(および古新聞紙がいります。

 古新聞紙というものは,私も使ってみて大変便利だと思いましたので君たちに勧めるのです。新聞紙の上に写真を裏向けにして置き,その裏側にノリを一面に塗り,その端や角にもよくノリを付けて,それからアルバムのほどよい位置に貼りつけるのです。今ノリを付けた部分の新聞は,まだ粘っていますから,その新聞を二つに折れば,新しい「ノリ付け場」が得られます。
 写真は,しばしば周りの縁が黒ずんでいます。これは縁を切り捨てるときれいに見えます。四隅をハサミで切りとるとこれまたこぎれいにみえます。

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●ウルフ・カブのバンド(音楽隊)

 オオカミの群れは,ジャングルの中を駆け回るとき,彼らが音楽と呼ぶところの叫び声を出します。別に誰もこれを音楽と呼んではいないけれども,オオカミたちを慰めたり愉快にさせるわけです。

 我々カブの隊でも,バンドを作って音楽をやってもよいわけです。音楽隊というても,これはトランペットだの飾りのいっぱいついたドラムだの,そういうお金のかかるバンドを言うのではありません。それに負けないくらい上等の音楽ができ,しかも,お金のいらないバンドのことであります。

 もちろんバンドという以上,まず第1に大太鼓がいります。だけど,これはビスケットの古箱かまたは石油かんで,それに太鼓のバチがいります。バチは肉屋で脛の骨を貰ってくるか,または先のところをボロ布で巻いた丈夫な棒でできます。
 シンバルは? ええこれはね,できあいのものがありますよ。台所へ行ってソースパンの蓋を二枚持ってくればよろしい(お母さんの許しがあれば)。
 トライアングルは? もちろんトライアングルがいりますね。その辺に,ちょうど手頃な大きさのがあるじゃないですか・・・・火箸を二本ね。ひもを穴に通し,大きなドアーのカギをつけてならすのです。
 トランペットやフルート,それに,ファイフのような吹く楽器は皆、演奏者が自分のロでやるのです。
 君らは,口笛でもハミングでも,お皿をあてて節をつけてもできますよ。けれどもうすい紙切れでまいた櫛を通して,ブーブーやると一層良い音が出ます。

 ショーの場合,コンダクターになる人が何といっても重要人物になります。動作がうまければ立派なコンダクターとして光ります。
 けれども,よほど用心深くやらないと,このバンドはバカげて見えます。やる時ややり方をよく考えなさい。
 君たちは騒がしい音でなく,よい音楽をやりたいならばきっとできます。時々柔らかに静かにハミングで歌うと思うと,今度は声高らかに大合唱をやったりして,たいそう上手に聞こえるような自信がつきます。

 私は,かってドラムとファイフをやりました,とても上手いバンドを聞いたことがありましたが,それは,たくさんの少年が石油缶を叩き,口笛で高らかに曲を吹いたもので,その効果は大通りを行進しているように響き素晴らしいものでした。

 家族バンドは,第1と第2の櫛と,火箸と一対のブリキの湯のみと,ソースパンの蓋と,ビスケットの缶ンと,お茶盆とで組みます。
 ドラムの音を消す効果のためには,お茶盆をバナナで叩くのが一番合理的です。

(訳者記,カナダ本は,この次に英国々歌やGOD SAVE THE QUEENの歌詞が載っている。)

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