日本ボーイスカウト茨城県連盟
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資料センター

ボーイスカウト十話(6)

 

プログラム・ピープル

 

三島  通陽

 

 

 戦前、歴代の文部大臣を団長とする大日本青少年団は発足したものの、すぐふらつき出した。こんな運動は、役人や大臣の余暇でやれるものではないからである。それでこんどは、大政翼賛会の翼下にはいって団長は鈴木孝雄大将がなった。鈴木はりっぱな人格者だったが、組織としてはナチスのヒットラー・ユーゲントの組織をまねたもので、もっともよくないゆき方だったと思う。

 いま、世界のボーイスカウト運動には「政治と混同しない、一政党派の宣伝をこの運動の場でしない」という申し合わせがある。また、「民族や皮膚の色で差別をしない、みな同胞だ」との申し合わせもある。

 つぎに、政府とボーイスカウト運動との補助金のことで考えてみると、新興国のなかには、政府の丸がかえというものが多いが、これはどうも成績があがっていない。こういう運動は、民間のボランティア運動として自主的にやらせ、ヒモつきでない補助金を出している国がもっとも多くかつ成績もいい。

 その中で政府の補助を全然受けていないで、しかも、世界で一番人数も多く、また金持ちなのはアメリカのボーイスカウトである。もっとも精神的には、国会は法律まで出して大いに保護している。なぜ金持ちになったかというと、初めは多額の寄付金もあったが、いまでは需品部(代理部)の収入である。これは安くて良い品を全米のスカウトをはじめ一般にも売っている。よいメーカーとタイアップし、デパートとも結んでいる。そのほかに「赤い羽根」からの収益もある。その収入の多くは、専従職員の人件費に使われる。スカウト運動はどこまでもボランティア運動だが、その中に専門家ができると専従職員として引き抜き、これらは次第にその数を増し、いまでは5千余人もいて、特別の訓練をさせ、全国に配し、どこまでもボランティアを表に立てて、縁の下の力持ちとなって、推進させる。これが全米のスカウト数を増していまでは7百万近くとなり、世界のスカウト数の、5分の4以上を占めた大きな原因である。

 こういう運動の指導者には、プログラム・ピープルとアドミニストレイティブ・ピープルと2つが必要で、その両者が、助け合い、組合わさってこそ、運動は推進する。

 プログラムなき青少年運動は、長くもたない。さきごろ,数カ所の都市で「××少年団」というのを都市当局が作り金を出した。1年くらいは、ハデにやっていたが、2~3年してみな消えた。その指導者にプログラム・ピープルがいなかったからであった。も一つこの少年団の作られた動機が感心しない。何か団体なぞに奉仕のために作られた。小さい子供には「奉仕のための奉仕」はよくない。どこまでも「教育のための奉仕」でなければならない。しかし青年は違う。近ごろのワーク・キャンプなぞは大いによろしい。ところで、団体のサービス・ボーイに使って、あとはサヨナラでは子供こそ迷惑なことである。大切なのはその連続したプログラムにある。それをアドミニストレイティブ・ピープルが、行政、管理を受け持って行うのである。私は他の友好団体の批判をしないことを、建て前にしてきたが、近ごろ多くの青少年団体ができるので、これは、ちょっと老婆心での一言として許されたい。

 我々の先輩、佐野常羽は、指導者には「実践躬行、精究教理、道心堅固」の3つが鉄則だといっていた。十余年前、私が、戦後はじめての世界会議にいく時、八十余歳のかれに、この英訳を求めたところ

   “Activity First”

   “Evaluation Follows”

   “Eternal Spirit”

と訳した。とにかく実行が第一だ、そして、それを再検討し理論研究が必要、そしてさらに理想の精神、筋金入りの根性が大切だという意味に訳したところ、おもしろい味があると思った。要はデスクトップ・プランでは、この運動は成り立たないということである。よきプログラム、次はその実行、そして継続ということである。

(スカウティング誌 '80.10 より転載)

 

(スカウティング誌 '80.10より転載)