野営グッズの選び方 (着る)
ここでは、キャンプやハイキングで着るウェアについて説明します。
雨具(レインウエア)
野外でのスカウト活動をする際に、まず第1に用意しなければならないのが「レインウェア(雨具)」です。雨具に関しては、必ず良いモノを揃えること、これが大切です。
アウトドアの天候は急変することがあります。特に「山」は!
「あれ? 雲がかかってきたかな」と思ったら、あっという間に雨が降り出すなんてことも当たり前なんです。町を出るときに晴れていても、山沿いでは雨になることもめずらしくありません。
ということで、野外ではどんな活動にも雨具は必ず持って行きます。夏場はまだしも(いや、夏でも)、他の季節では雨に濡れることは、体調を崩す大きな原因となります。野外では、いかに衣服を濡らさないかを考えなければなりません。
●どんな材質・形のものを揃えるか
素材はいろいろありますが、雨の中の活動や作業を考えるのだったら、迷わず「防水透湿性素材」を選んでください。防水透湿性素材には、ゴアテックスやドライテック等があります。これは、水の分子は通さないけれど、水蒸気は通す、理想の素材です。
形はレインスーツ型、そう上下セパレートのものを揃えてください。靴を履いたままでも脱着ができるように配慮したものもあります。
●内部からも濡れる?
「濡れる」というと、雨や露による外からの濡れを、ついイメージしてしまいますが、山登りや夏のキャンプなどでは、内部からの濡れ、そうです「汗」への対策もしっかりと考えなければなりません。
ウエアによっては、脇の下にチャックがついていて、それを開閉することで内部の湿気を排出できるものもあります。特に「冬」場の活動では、衣服が濡れることは、ともすると「死」に繋がります。
夏場の活動では、いくら「防水透湿性素材」であっても、皮膚から既に汗という水分子が出ているので、そのままレインウェアを着たら濡れてしまいます。ですから、汗を水蒸気に変える仕組みが必要となります。(これはレイヤードシステムのところで説明します)
●ポンチョ
1枚の布の真ん中に穴が開いているポンチョは、裾が広がっているので蒸れにくい上、パックを背負ったまま、頭からかぶることができるので、ちょっと前まではよくアウトドアで見かけました。
難点は、横や下からの風雨に弱いこと、足下が確実に濡れることです。それと、構造上蒸れにくいので、「防水透湿性素材」のものは見かけません(まぁ、必要無いんですが。笑)。
雨対策など、ちょっとしたテント周りの作業にはいいかもしれませんが、あまりお勧めはしません。
●透湿性がないものは・・・
昔からあるゴム引き合羽やPVCコートのものは、汗の逃げ場がない(水蒸気となって外に逃げられない)ので、汗によってかえって服が濡れてしまいます。これは先に述べた通りです。夏の暑いときは不快そのもので体調がおかしくなりそうです。
また、服が濡れたら、着替えなくてはならないので、余分な着替えが必要になる・・ということは、持ち物が多くなるということに繋がります。
■レインスーツ
(ザ・ノース・フェイス・RAINTEX Plasma)
■ポンチョ
●100円カッパ
コンビニ等で売っている通称100円カッパ(100円では買えないけれど)は、一時しのぎにはなりますが、透湿性は皆無。しかもフロントはボタンを留めるだけなので密封性(そこから雨が入ってくる)もありません。ひとたび強風が吹くと、ひとたまりもなく破けてしまいます。もちろん足下は濡れてしまいます。
●結論
おすすめはゴアテックス等の「防水透湿性素材」を使ったレインスーツ(上下セパレートにもの)。
とにかく雨具はいい物をそろえてください。場合によっては命に関わってきます。
●ワンポイントアドバイス
いろいろなメーカーから高性能なレインスーツが出ています。
つい材質や製法に目がいってしまいがちですが、見落としがちの大切なポイントがあります。それは「フード」です。
レインウェアでは、フードはふつう上着の襟に縫い付けられています。ただ、その取り付け方と形状を確認しなくてはなりません。雨の日では特に安全に注意を払う必要がありますが、横を向いたときにフードが首と連動しないものがあります。これは、意外と不快ですし、みちを歩いていて後ろから来る車などを確認する時に、首だけでなく体も一緒に回さないと、しっかり後ろが確認できません。
また、フードの形状が悪い、ヒサシがない、あっても役に立たないものもあります。そういう点にも注意してください。今持っているものがそのようなものであれば、そんな場合は野球帽(活動帽)をかぶったり、別途レインハットを用意するなどで対応しましょう。
もう1つがポケットの位置です。最近のレインウェアのポケット(腹部)は、高い位置に付けられています。これは、パックを背負ったときに、ヒップベルトをしても、ポケットが使えるようにしているのです。これもポイントですね。
また、レインウエアに防水性があるということは、防風性もあると言うことです。雨が降っていなくても、風か吹いたり冷え込んできたりしたときは、羽織るだけでアウターウエアとしての効果があります。
それと、小型軽量の折りたたみ傘が1つあると便利です。キャンプでのトイレの時とか、ハイキングでの突然の雨の緊急避難用に重宝します。
防寒着
天候はいつ変わるかわからないし、もしかしたら、スケジュール通りに行動できずにビバークするかもしれません。そんなことも考慮して、朝晩が冷え込む季節はもちろんのこと、夏場でも必ず持参します。
防寒着は、必要な体温を保つためのものです。アウトドアで体温を奪うものは、汗、雨、風、外気温等があります。これらからの影響を抑える・防ぐことが防寒着の役目です。
どうしたら防げるのか、それには2つのポイントがあります。1つ目は、体表(肌)で水分を気化させないことです。汗をかいてそのままにしておくと体が冷えてきます。それは気化熱によるものです。特に風があると気化は促進されます。ですから、汗を肌に残さないで、来ている服の外に放出することです。
もう1つが、暖まった空気を閉じ込めることです。衣服の素材そのものは体温よりも温度が低いことは解ると思います。ダウンやフリースやウールがどうして温かいのか、それは、これらの素材(繊維と繊維の間)には、空気が閉じ込められています。この空気は流れ出ないので「デッドエア」と呼ばれます。この空気が身体の熱をためこんで、暖かい空気の層をつくるので、温かく感じるのです。
●ハイクで求められる性能
ハイク時に求められる防寒着とは、防風性と防寒性の両面をもっていることが大切です。特に風を通さないことは重要です(別途防風着があれば別ですが)。いずれにしても、汗(水蒸気)が外に放出されることが大切です。保温効果は、防風機能が十分であれば、必要なデッドエアを保てればいいでしょう。
防風については、常備しているレインウエアを利用することもできるので、それを使用する場合は保温面を考えて、薄いフリースの上着を持参するようにしましょう。
●キャンプで求められる性能
キャンプの場合は、保温効果を優先して考えましょう。
保温のシステムをよく考えて、身体の周りにデッドエア(流れ出さない空気)の層をつくれる、そんな素材のものを選びぶことが大切です。
ただし、厚着になって動きが妨げられるものは避けるべきです。
●材質(素材)
「ウール」は天然の優れた保温素材で濡れても保温力がありますが、かさばるのが欠点。
「フリース」は軽くてコンパクトになり、濡れても繊維そのものに浸みこまないのですぐに乾きますが、防風面は弱いのが欠点です(最近防風タイプのものも販売されている)。
「ダウン」は非常に軽くてコンパクトになるたいへん優れた素材ですが、濡れるとアウトです。また、フリースに比べて高価です。
●おすすめは
総合的に判断すると、1着ですませるならアウターが防風性のある素材でインナーがフリースになっているものを、重ね着OKなら、アウターにレインスーツの上着、インナーに薄手のフリースを選ぶのがいいと思います。
■防風フィルムをフリースで
挟み込んだもの
パウダーシェッド パーカ
(モンベル)
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中間着・下着
●下着
アウトドアでは、ベースウエア(下着)、ミドルウエア(中間着)の選び方も大切です。
特に、寒い時期のベースウエアは「綿製」のものはダメです。汗をかいたときに綿は繊維そのものに水分を含んでしまいます。つまり肌と接しているところで気化が起こり、気化熱によって身体を冷やしてしまうし、なかなか乾きません。
また、ポリエステル等の化学繊維は、繊維自体には水分を含まないので、毛細管現象でそれが素早く外に放出されます。つまり肌と直接接していないところで気化されるので、身体は直接は冷やされません。そのため、基本的には汗の吸湿を助けるミドルウェアとセットにして着用します。
近頃出回ってきた「ヒートテック(ユニクロ)」「ブレスサーモ(ミズノ)」等の一般に販売されている発熱素材は、基本的に、街歩きや軽作業、軽スポーツに適するように作られています。
発熱の仕組みは、(ユニクロによると)「水の分子は、気体になると空気中を動き回る性質があります。そのため身体から発した汗や身体についた水分などが蒸気として気体になると、その水の分子は肌とヒートテック生地の間を激しく動き回ることになります。その水の分子を吸湿性に優れたレーヨン繊維が効率よく吸着します。すると、繊維にキャッチされても動こうとする水分子のエネルギーが、熱エネルギーとなって発熱するのです。」
つまり動いて適度に汗ばんでいれば暖かいですが、汗をかかないと発熱はしませんし、繊維中の隙間にあるわずかのデッドエアしかないので、保温性はさほどありません。繊維の性質上、肌はドライではありません。また、汗をかきすぎると、気化することができなくなります。つまり極端ですが、綿と同じであると思ってください。汗をかかない冬のキャンプなどであれば、これも選択肢に入ります。
また、ハイキングなど汗を大量にかく活動の場合には、山用の発熱素材が良いでしょう。例えば、モンベルのジオラインは「動いている時に必要以上に汗をかかない、そして動かないときは保温する」ことを第一に考えられています。 これらの違いも知っておくと便利です。
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レイヤードシステム
ハイキングやキャンプを快適に楽しみたいなら、常に変化する状況にスムーズに対応するウエアのレイヤード(重ね着)システムを知っておきましょう。
レイヤードシステムは、ウェアの構成を「アウターレイヤー」「ミドルレイヤー」「ベース(インナー)レイヤー」の3グループに分けて重ね着し、天候や運動量に応じて着脱することで温度調節を行い、ウェアの性能を発揮させることをレイヤリングといいます。
▶アウターレイヤー
【主な役目/中間着で守られた体温の放出を防ぐ防風性・汗を放出
する透湿性】
防水性、防風性を主な目的に、雨・風・雪などから身体を守りま
す。透湿性に優れた一枚地のものと、中綿入りで保温性の高いもの
に分類でき、運動量や標高、気象条件などを考慮して選択します。
防風性が高いアウターウェアは数多く、一着は欲しいところです
が、実際、アウトドアギアの基本で多くの方が持っていると思われ
るセパレート型のゴアテックス製レインウェアがアウターの王道で
す。気温や天候、運動量によってジャケットを着たりパンツをはい
たり出来ますので大変便利。
防寒対策でも大活躍してくれるゴアテックス製レインウェアはア
ウトドア遊びの必需品といっても過言ではないでしょう。
またズボンも防風性、速乾性を兼ね備えた機能性の高い専門ウェ
アがありますので一着あると大変重宝します。
▶ミドルレイヤー(中間着)
【主な役目/体温の低下を防ぐ防寒性・汗を放出する透湿性】
行動中に着用する「行動着」、休憩中や気温の低いときに羽織る
「保温着」があります。主に保温性の確保が目的となりますが、気
象条件や発汗・運動量などに応じ、汗をスムーズに透過させる通気
性や速乾性も大切なポイントになります。
ミドルレイヤーとして最も代表的なものはフリースです。アウト
ドア専用で売られているフリースには、防風性素材を施したタイプ
や、アウターシェルと一体型で、それぞれ取り外しができるタイプ
など様々。しかし基本的は少し厚手のシンプルなフリースがおすす
めです。
防寒性を高めたい場合はプルオーバータイプを、汗をかく遊びが
主でジッパーの上げ下げで体温調節を頻繁にしたい場合はジャケッ
トタイプを選びましょう。
▶ベースレイヤー(インナーレイヤー・アンダーレイヤー)
【主な役目/汗を吸い取り、乾かす吸水・拡散・速乾性】
素早く汗を吸水拡散して肌をドライに保つことと、保温性の確保が
主な目的です。気象条件、発汗量や運動量などに応じて選択しま
す。
ベースレイヤーの基本は、パンツ、昔で言うスボン下、シャツ
(長袖)の3枚。
普通に売られている綿の下着類は汗を吸い取ってくれますが、乾
きにくいのでアウトドアシーンでは化学繊維のものがオススメで
す。
化学繊維の素材の名称は開発した各メーカーによって独自の名前
がついていますが、防寒性の高いものから順に、エクスペディショ
ン・ミドルウェイト・ライトウェイト・シルクウェイトなどとクラ
スを分けているのが主です。冬であれば、雪深いフィールドに行く
のでなければミドルウェイトクラスをそろえましょう。
また、シャツはアウターと中間着を脱いで単体で着ることもある
ので、本当の意味での「下着」として利用するだけではないので注
意が必要。これも綿のTシャツは避けたいですね。
もちろん、ブリーフ、トランクス、ショーツ類も化学繊維のもの
を揃えましょう。
レイヤードシステムの理想としては、自然環境の中を歩くのですから、すべての状況に対応できるウエア類を用意することになりますが、これはあくまで理想です。
特にボーイスカウトの活動となれば、制服の上下という存在があり、それが足かせとなって、レイヤードを難しくしてしまいます(本当はそんなことはないのですが・・・)。
自分の持っているウエアのなかで、出かけようとしているフィールドに対応できるものを選んで工夫すればいいのです。しかしながら、フィールドの気象は日々刻々と変化しています。ですから、天気予報や気象情報から、現地の状況を予想して、それに対応するウエアを持って行くけるように、判断できるようになることが大切です。
■アウターレイヤーの例
■ミドルレイヤーの例
■ベースレイヤーの例