キャンプは、野外を楽しむ最良の機会のひとつであり、スカウテイングと同様に、野外で組織的に行う活動であります。
キャンプといっても、カブ隊においては、必ずテントを設営し野営生活をしなければならないということではありません。恒久的施設(建物)に宿泊しながら、野外活動をすることも含めて「カブのキャンプ」と称することが一般的です。
ボーイスカウトにおける野外活動の価値の多くは、カブのキャンプにおいても変わることはありません。実際に行動し、発見の喜びを通じて、楽しいことや感性を磨く等、多くを少年たちが学ぶ理想的な場なのです。
1.カブのキャンプの効果
通常の活動では、あまりめだたなかったカブスカウトが、本来の自分の姿を見せることもたびたびあります。
大自然は、少年たちにとってだけでなく、誰にとっても向上の素晴しい舞台です。特に、カブのキャンプではそれが短期であっても、認識、感謝、信頼、協力、忍耐、創造性、経験を広げ、伸ばすことにより、社会的、肉体的、精神的成長の時を与えてくれます。
これによってカブスカウトが得られるのは、
などです。
また、キャンプの実施にあたっては、隊長として多くの配慮すべき事項があります。特にカブスカウトは、まだまだ保護者の手助けを多く受けて生活をしている年代ですから、日常と異なる環境となるキャンプの生活においては、指導者や支援者、保護者など多くの成人の力を借りて、カブスカウト一人ひとりが積極的に自信を持って、かつ安全にキャンプを体験し、自信の成長につなげられるようカブのキャンプを企画し、運営体制を構築し、プログラムを組み立てていくことが必要となります。具体的には、
㋐保護者の協力を期待する。
㋑全指導者による事前の調査研究を充分行う。(期日、期間、場所、プログラム、特定のカブスカウト
に対する注意事項《発達障がい、夜尿症など》など)
㋒組の体制の維持。
㋓健康管理には特に留意。(最近の健康状態やアレルギー等の把握)
㋔プログラムの内容には、
などを考えていく必要があります。
カブのキャンプは、保護者の全面的な協力を得ると最大の効果があります。それだけでなく、キャンプに保護者が参加するということは、カブ隊や指導者への理解を深めるよい機会となり、日頃の協力を得ることにも繋がりますので、是非保護者が参加できるように環境を整えましょう。
カブのキャンプでの生活は、当然ながら組活動が主体となりますが、そこで展開されるグループでの生活は「やくそく」と「カブ隊のさだめ」の実践をする絶好の機会であり、場となります。指導者はそのことを充分に理解し認識して、プログラムを運営しましょう。
2.カブのキャンプの実施条件
テント泊で行われる場合のカブのキャンプは、ついボーイ隊と同じように考えていまいがちですが、カブのキャンプは、ボーイ隊で行うような「野営(キャンプ)」ではありません。ボーイやベンチャーのキャンプでは、そのほぼ全てをスカウトが行うのに対して、カブのキャンプでは、寝る場所のみを建物からテントに置き換えたというだけのことなのです。
キャンプの生活においても、カブがテントを張ったり、炊事をするのではなく、指導者や保護者が主体となってテントを設営し、炊事場を作り、調理をするのであって、カブスカウトはその手伝いをするという位置づけになっています。
それは、カブスカウトには、自然の変化に対応するキャンプ生活を自分でするには、まだまだ体力も身体能力も知識や知恵も足りないだけでなく、サイトを設営するなどのキャンプに必要な技能の習得もしていないという理由からです。
ということは、テント泊でのカブのキャンプを実施するということは、カブの指導者には大きな負担がかかる・・・ということです。そのため、指導者の経験や技能によっては、常設のキャンプ場に張ってあるテントを利用したり、指導者や支援者が前もってテントを張り、必要な施設・設備を整えてから、カブスカウトを迎えるということも考える必要があります。
このように、単に建物でなくテントに寝るだけのことなのですが、実際には、カブスカウトには多くの危険が伴うのです。
経験を積んだボーイスカウト年代ではふつうにできること、例えば、テントの構造を理解してテントを使うこと、夜にトイレに行くためにテントのチャックを開け閉めすること、懐中電灯を自分で管理すること、夜の闇の恐怖、テントの換気に気を付けること、暑さや寒さに応じたスリーピングバッグの開閉調整などは、まだまだできません。また、年齢的におねしょなどにも注意する必要があります。
このように、カブの指導者と言えども、体力はもちろん、ボーイ隊の指導者同様の野営技能が求められ、かつ、ボーイ以上に安全面や生活面への配慮や対応が必要となるのです。
3.カブのキャンプの計画と準備
カブのキャンプは、通常はカブの隊集会として実施され、かつカブ隊の1年間のハイライトのプログラムです。しかし、野外活動の一環として自然の中でしかできないことなどをプログラム化して、その成果をあげる必要があることから、他の月以上に周到な計画と着実な準備、そして多くの方の協力と支援が必要になります。次のページにカブのキャンプの企画から実施までのスケジュールの一例を示しましたので参考にしてください。
4月の年度開始から8月にカブのキャンプを実施するまでの期間は、たったの4ヶ月です。この期間だけで、毎月の活動を行いながら、かつキャンプの全ての準備をすることはたいへんなことです。また、近年のキャンプブームで野営地の選定や予約などは、前の年度に行っておかなければならないこともしばしばです。さらに4月を跨ぐということは、もしかすると隊指導者が変わっている場合もあります。支援体制も含めて団委員会にも関わってもらうことを考えましょう。
また、組の運営についても配慮することが求められます。以前のような9月からの年度開始では、年度最後の8月のカブのキャンプは年度終盤で組の結束も固いものになっているはずです。しかしながら4月の年度スタートでは、8月の段階ではまだチームビルドの最中であろうと思われます。したがって、カブのキャンプのプログラムもそれまでの月のプログラムやねらいや進め方もチームビルドを意識したものであることが望まれます。
各隊が置かれている状況やプログラムの内容によって計画と準備の進め方は異なるでしょうが、カブのキャンプを行うためには、計画と準備には十分時間をかけなければなりません。
4.指導者に必要な知識と技能
カブのキャンプでは、計画と準備と共に、指導者にとって野外活動を行うための自然に関する知識や各種スカウト技能の修得は必要なことです。中でもキャンプ技能の修得は欠くことのできない重要な要件です。特にくまの進歩課程では、これまで以上に指導者としての野外活動の知識や技能が必要となってきました。
野外活動の実施にあたっては、まず、自然に対する正しく十分な知識と理解が必要であり、その上で、プログラムを進めていくための必要な技能の習熟が指導者に求められます。カブ隊の指導者の勉強会だけでは十分でないときは、団内の他隊指導者やインストラクターの支援を受けるなど、多くの人材を活用することを考えましょう。
それ以外に、日本連盟から発刊されている書籍や機関誌を精読することや、地区や県連盟で行われる「キャンプ講習会」「野営法研究会」への参加、さらには、隊や団の先輩指導者やコミッショナーやトレーナーから個別の支援を受けることが大切になります。さらに、地区などで行われる各種の技能研究会や研修会に参加することによって修得することもできます。
これらの知識や技能が修得できたら、スキル・トレーニングに取り組み、認定を受けておきましょう。スキル・トレーニングの課目には、ボーイスカウトの指導者として身につけるべき最小限の野外活動技能が示されています。
指導者としては、まず自らが学ぶ姿勢が大切になります。知ること(理解)に始まり、自分ができること、そしてスカウトたちに教えられるという三つの要素が必要になります。
カブスカウト教育にあっては、野外活動は欠くことのできないものですし、野外活動の展開もいろいろなものが挙げられます。
しかし、テント泊によるカブのキャンプは必須ではありません。基本は舎営によるカブのキャンプです。舎営でも、カブスカウト活動での野外活動は十分展開できます。というよりは、寝る場所が建物からテントに置き換わっただけなのです。まずは、よい舎営が実施できて、初めてテント泊によるカブのキャンプへと段階的に発展することができます。単に舎営がテント泊になっただけでもカブスカウトにとっては、大きな冒険*であることを指導者には知っていただきたいと思います。
くり返しますが、カブのキャンプは、ボーイ隊で行うような「野営(キャンプ)」ではありません。ボーイ隊のキャンプのミニチュア版としては絶対に行わないでください。カブスカウト活動がねらっている野外活動の在り方とは、大きくかけ離れてしまうカブのキャンプになってしまうからです。
よりよい野外活動、特にカブのキャンプは、必要かつ欠くことのできない諸条件を整えて初めて実施することができます。周到な計画と準備、指導者の知識や技能、そして健康管理と安全対策を十分に整えて、カブのキャンプを実施してください。