日本ボーイスカウト茨城県連盟
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県連情報

安全について

 

 スカウトに、より楽しい、より活動的なプログラムを提供するためには、安全への準備と危機管理への取り組みを欠かすことはできません。「安全はすべてに優先します。」

 

1. 安全教育

 

 安全教育とは「何らかの危険な活動に際して、予め事故を起こさない、事故に遭わないようにと行われる教育」のことです。さらに、安全教育には、「安全知識の教育」「安全技術の教育」「安全態度の教育」の3つの要素があります。

 

① 安全知識の教育

 指導者は、過去の事故事例などを参考に、その防止策を考え、様々な情報を集め、小さな体験学習を積み重ねるなどにより、生活上の基本事項としての安全知識の導入が重要です。

 ゲームやスポーツ等の場合、そのルールを守ることが安全への基本の第一です。往復の車中や公共の場でのマナーを守る、さらに悪ふざけ等をさせない、これも安全への第一歩です。

 

② 安全技能の教育

 技能とは技術を駆使する能力であり、熟達した技能こそが安全を約束するといえます。また、安全技能の教育は「知っている」ことだけでなく「できる」ことまでを求める教育ということになります。

 安全に刃物を使用できる、しっかりとロープを結ぶことができる、等々言い換えれば、スカウト技能の訓練は安全教育の実践ということができます。

 

③ 安全態度の教育

 安全知識、安全技能ができていても、それを実際に行うのはスカウトであり、それが実行できるかはスカウト当人次第ということになります。「やろうという態度」「できる態度」を育てることが大切です。

 カブスカウトにおいては、カブ隊のさだめに「自分のことを自分でする」「互いに助け合う」「幼いものをいたわる」ことがあり、指導者が、そのことを充分に理解し日常の活動で指導しておく必要があります。

 スカウト活動においては、安全のために必要な事柄を理解させ、安全へのしつけを指導し「ルール」を守ることを教えます。

 日常生活のなかに潜む様々な危険を予測し、正しい判断のもとに安全な行動ができ、自他の生命を尊重して自分の周りの安全に役立つ態度を養うことが必要です。

 総合すれば安全教育は心技体の教育ということになり、すなわち安全教育は全人教育であるということができます。

 

 

 

2 安全対策

 

 行われようとするプログラムに必要な安全への知識・技能・態度・体力等と、実際のスカウトの持つ知識・技能・態度・体力等のギャップを、指導者が具体的に埋める作業が「安全対策」ということができます。

 これについては、「危険予知訓練(KYT)」として、より安全性を高める作業を実施することが大切です。

 指導者は、プログラムを実際に展開するにあたり、発生する可能性がある危険を時系列的に予知・予測し、それを解析し、どのように対応するかを具体的に考えておく必要があります。

 その対策を確保するためにどのような資材・人材が必要か、それはどれくらいの量が必要か、それはどこに配置すれば効率的か等を考えなければなりません。

 また、そのために人員はどの程度必要か、場合によっては隊だけでなく団委員会に支援を要請することも必要になる場合もあります。

 したがって、安全対策を検討するに当たっては、一人の考えだけでなく、そのプログラムに携わるすべての人達の意見を参考にし、計画した安全対策はプログラムに携わるすべての成人が共通に理解をしてプログラムを展開することが必要です。

 

 

●危険予知訓練(KYT)の手順(例)

ステップ1

活動内容(状況)

・プログラムの状況の中に潜む危険要因を発見する。

・メンバーは活動状況の中に我が身をおいて、その中にある危険

 要因(不安全行動・不安 全状態)を発見する。

・危険な状況が発生しそうな活動上の具体的な場面を設定する。

ステップ2

危険要因

潜在的危険要因

・危険要因はそれが引き起こす現象を想定して「~して~なる」

 「~なので~になる」とい うように文章化する。

・物の問題だけでなく、人や行動面の危険を発見する。

ステップ3

危険排除の対策

・「こういう状況ではこうしよう」「こうすることが必要だ」と

 いう実行可能な対策を出して いく。

・実践的な行動内容の対策を考える。

ステップ4

実行計画

(5W1H)

・計画はその状況の危険を解決するに必要な行動内容であるよう

 に「~を~して~する」という具体的な実行計画にする。

・必要な資材・担当・時期・場所・方法・他を計画する。

3 安全管理

 

 プログラムの企画段階から安全を守るための安全管理体制を策定しておく必要があります。いざというとき、スカウトの危機を救うために行動でき、人を動かせる組織づくりが必要となります。

 スカウト活動の運営の単位は団であることから、安全管理もその最小単位を団とするべきで、その管理責任は団委員会にあり、その責任者は団委員長ということになります。しかし、団委員長一人に責任を押し付けてしまうことでは、組織の意味がなくなります。

 隊の中での安全管理は隊で行いいます。つまり、直接の管理責任は隊長にあります。そして、隊を包括管理しているのは団であるので、団にもその責任があるということです。

プログラムを実施するに当たっては、団会議等の場を通じて、プログラム実施計画や安全対策計画を団委員長に提示し、理解と承認を得ることが必要となります。それをしないでプログラムを実施しては、団委員会としては責任を持つことはできなくなります。

 

●安全教育・安全対策・安全管理・危機管理

項    目

責 任 者

実施する場面

内     容

安全教育

隊指導者

各部門のプログラムプロセスの中で実施される。

スカウト活動においては、日常のプログラムにおける知識・技能の訓練

安全対策

立案:

 隊指導者

実施:

 隊指導者

 団委員会

プログラム準備段階とプログラム実施時

必要な対策を講ずる。

成人の支援により、安全性を高める。

安全管理

自己責任を含めすべてのレベル

現地の全般責任は

指導者と団委員会

全ての場面

全教育の評価と確認作業。

安全が計画通り運用されているか、評価・運用を繰り返す。

問題発生時に、リカバリ計画を立案・実行する等、安全対策が機能していくよう管理する。

危機管理

団委員長

(団委員会)

全ての場面

不幸にして起きてしまった事故の対応について、そのダメージを最小限に食い止めるための作業。

・不可抗力による事故や災害も検討課

 題の対象となる

・保険の加入についても危機管理の一

 環として行われる。

4 健康管理について

 

 活動を展開しようとすると、そこでは個人的生活習慣に多少の変更が求められます。通常の生活と環境も異なりますし、活動の形態も遣うので、体調を崩したりする場合があるので注意する必要があります。

 野外活動では、実際に健康管理を行うことは難しいものです。環境の変化によって熱を出したり、便秘となることが多く、さらに睡眠が十分でなかったなどのちょっとした生活のリズムの狂いが体調を損なう原因となることがよくあります。

 熱が出たらすぐ解熱剤、便秘になったから下剤という早急な対応はかえって悪い結果を生じます。まずは少し時間をかけて観察することが必要であり、何よりも治療行為は医師や医療機関に任せるべきものです。

 

 スカウトの健康について隊長は、次の要素を理解しておくことが大切です。

(1)少年たちの特性を知る

精神と肉体のアンバランス、未熟さとともに驚くべき成長、成熟度の大きな個人差、飽きやすさと疲れやすさ、新陳代謝の旺盛、休養と栄養補給の必要性・・・等、少年の特性を知ることが必要です。

 

(2)健康状態の確認

隊長はカブスカウトの健康状態を常に把握し、その健康を確認しておかなければなりません。そのためにはスカウトの保護者との連絡を密にして、カブスカウトの健康状態に関する情報の収集が必要ですし、常にカブスカウトと接し、異常を感じることがないかという点にも留意します。多くのスカウトに接していると、ひとりだけ何か異常のあるスカウトにはすぐに気がつくものです。カブのキャンプ等では特に健康カードを用意して、各スカウトの疾病やアレルギー等の健康状態を常に把握するのもひとつの方法です。

 

(3)活動に応じた休養と栄養

成長期の年代のカブスカウトには、常に休養と栄養が必要です。このことを隊長は機会あるごとにスカウトと話し合い、実行させるよう努力すべきです。カブのキャンプ等の睡眠不足は、注意力の散漫、思考力の低下を招き、健康に悪いばかりでなく、ときによると思わぬ大きな事故を招きます。

 

(4)病気の早期発見を

医師でなくとも、スカウトの顔色、姿勢、食欲、便通、睡眠、体温等の異常により観察することはできます。

 

 

5  冒険的プログラム

 

 「“安全”のことばかりを考えていると、冒険的なプログラムが作れない」

ということを言う人がいますが、それは全く逆です。より冒険的で、ダイナミックで、スカウトがワクワクするプログラムを計画するためにも、安全教育、安全対策、安全管理が必要であるということなのです。

 安全への手を抜かず、スカウトの冒険心に火をつけて、活気ある活動を進めてください。勿論、安全は譲ることのできない必須要件ですので、成人指導者は安全を確保して楽しい活動が展開できるよう配慮することが大人の重要な支援なのです。